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埼玉に「ムーミン谷」、ヘッジファンドから「かわいい」事業へシフト

ヘッジファンドを売るのはやめて、今はムーミンたちをどうしたものかと考えている」。東京で金融に30年携わり、バブル経済時代に円・ドルスワップを開発した草分けのロバート・ハースト氏(68)は今、埼玉県飯能市で来年開園するムーミンのテーマパークの準備に追われている。作者トーベ・ヤンソンの故郷フィンランド以外では日本が初の進出先だ。
  ストラクチャードファイナンスに特化した日本の金融会社フィンテックグローバル(FGI)会長のハースト氏は、230億ドル(約2兆4000億円)規模に拡大している日本のキャラクタービジネス市場に注目、特に「日本はかわいいものが好きだ」と話す。ハローキティのような架空のキャラクターを敬愛する国ではムーミンはぴったりだという。
  ハースト氏は世界銀行で勤務後、1984年にシティグループデリバティブ・セールスのヘッドとして来日。他の金融機関を経て2005年にFGIに入社、ヘッジファンド設立などを支援してきた。転機が訪れたのは12年のAIJ問題。運用失敗と損失隠ぺいで年金資産を消失させた事件を契機に、日本の投資家のヘッジファンド離れが進んだ。

  そんな折、フィンランド投資銀行が13年に「日本でムーミンのテーマパークをオープンしてくれる人を探しているところがある」と提案してきた。ハースト氏が相談した最高経営責任者は、興奮気味に「ムーミン!やるべきだ」と即答。60年代から放送されてきたテレビアニメで日本人にとても人気があると力説したという。同氏は事業の軸足をヘッジファンドから、ムーミンへ移しつつある。
ムーミン人気
  FGIはフィンランド企業との合弁会社ムーミン物語」を設立し、西武ホールディングスが保有する飯能市の土地と建物を購入。広さは東京ドーム約4個分の広さで、宮沢湖に面している。ディズニーのテーマパークとは異なり、自然をテーマに湖でのセイリングや木で作った巨大パズルなどを検討。北欧の雰囲気とムーミンの世界を体験できる施設も開設する。
  ファンは開園を心待ちにしているようだ。フィンランドに何度も渡航歴のある会社員の藤原琢也さん(43)は、「子供のときテレビでみた記憶が大きく団塊ジュニアにはなつかしい」と話し、「飯能にできるテーマパークは気になっており、3歳の息子を連れて1度は行く予定だ」と言う。
  ハースト氏によると、昨年のムーミングッズやライセンス料からの売り上げは世界全体で5億ユーロ(約580億円)。そのうち約4割を日本が占める。東京で開催された14年のムーミン展ではマグカップなどの関連商品が300万ドル(約3億1000万円)も売れた。フィンランドムーミンワールドで結婚式を挙げるために同国を訪れる日本人もいるくらいだ。
  経済産業省の統計によると、昨年度の国内遊園地の売上高は6530億円と2000年の調査開始以来最高だった。しかし、過去に開園したテーマパークはいくつも閉鎖に追い込まれ、長崎オランダ村や富士ガリバー王国はともに経営難で01年に閉園している。
金融ほどのスリルはなくても
  ムーミンの物語は平和な谷に住み、いつもハッピーエンドの冒険物語で「デジタルでもハイスピードでもなかった分かりやすい時代に連れ戻してくれる」と、ハースト氏は人気の秘密を分析する。
  リタイアした昔の同僚はムーミン計画を聞いて驚いているだろうが、生き方に大差はない。70代を目前に控えて人生のアクセルを緩め、バードウォッチングやワインを楽しむ代わりにムーミンについて会議しているだけだ。「最初のデリバティブ取引が成立した時ほどのスリルはないかもしれないが、今の人生段階にとってはちょうど良いかもしれない」。

 

〈情報ソース〉

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-07-31/OAX3TK6JIJV001