人生を大切にしたいなら、日常を大切にしなければならない モニカ・ルーッコネン

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 この連載は、フィンランドで生まれ育った私が、日本のみなさんに「フィンランドのシンプル」をお伝えするものです。私の最新作『フィンランド人が教えるほんとうのシンプル』(モニカ・ルーッコネン/ダイヤモンド社)より、記事を厳選してお届けします。
フィンランドの人びとの考え方、生き方、そして少しでもフィンランドの風を感じてもらえたらうれしく思います。
(写真:カタリーナ・ヤルヴィネン)


◾️日常を通りすぎず立ち止まる

 私は、図書館の自習室でこの文章を書いています。今朝は少々雨が降っていましたが、自転車で図書館まで5キロ走ってきました。冷たい新鮮な空気。さわやかな夏の香りがしました。
 仕事が終わって、家までサイクリングするときも、少しだけ立ち止まります。勢いよく流れている川、川の表面に跳ね返るような雨粒。これらの一瞬が私の大きな喜びです。

 さて、「日常」とはなんでしょうか? そんなこと考えたこともないかもしれませんね。私にとって日常は「人生そのもの」です。
 人によっては、日常というのはつまらない、ワクワクしないものかもしれません。しかし、私はそうは思いません。
 毎日を充実させることが、より素敵な未来をつくります。ふつうのことであっても、そのふつうの日常を大切に思うことが大切なのです。 

 

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モニカ・ルーッコネン Monika Luukkonen
フィンランドに住む作家・ノンフィクションライター。フィンランドのライフスタイル専門家。1971年フィンランド生まれ。企業のマーケティング担当としてフィンランドと日本を往復したり、日本に滞在した経験をもつ。2000年より翻訳家、作家としての活動をはじめ、現在は「Monika Luukkonen Literary Agency」を経営。フィンランドのシンプルな生き方、考え方を世界に広めるべく、情報発信を続けている。ひとり娘の母。著書に『ふだん着のフィンランド』(グラフィック社)がある。

 

「一度きりの人生だから、人生を大切にしよう」と考える人であっても、毎日をなんとなく過ごしている人は多くいます。しかし、その大切な人生というのは、無数の日常で成り立っているのです。よって、日常こそが大切なのです。

 特別なことをする必要はありません。より多くのモノや、より多くのお金も必要ありません。ただ、この毎日を大切に思えばいいのです。

 時間は「一瞬」から次の「一瞬」に流れていきます。一瞬は一瞬ですが、その一瞬の集まりによって日常がかたちづくられ、人生が成り立っていきます。毎回の食事、誰かとの会話、歩くときの一歩、呼吸さえも意識して大切におこなうことができれば、毎日は豊かになり、素敵な人生につながるはずです。

 なにげない日常において、ちょっとだけ立ち止まり、世界の不可思議を楽しんでみるのはどうでしょうか。その一瞬一瞬を十分に満喫することは、きっとあなたの人生を豊かにするはずです。

 

◾️財布を持たないぜいたく散歩

 私は、一瞬を大切にするために「1円もかからないシンプルなこと」を楽しむようにしています。

 

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 人とは違った特別な体験や、大きくて豪華で新しいモノを手に入れることなど必要ありません。そうではなく、お金のかからないもの、すでに持っているもの、すぐそこにあるものに価値と意味を見出しましょう。

 生活の中のシンプルで小さなことを楽しむ。そこからワクワク感は生まれます。

 たとえば、仕事で新しい人とつながること、なにげない雑談がおもしろい会話に広がったりすること。マグカップの中からただよう濃い紅茶の香り、仕事に行く途中の車の中で感じる一日の光の変化、四季の変化。

 それから、夕方のウォーキングで見る木々、新鮮な空気の香り、海の音。娘が前回よりもうまくテニスのボールを打てたこと、運転中に心に染み入るようなクラシックの音楽が流れてくること、図書館でたくさんのおもしろそうな本に出合うこと……。

 私は、建築が大好きです。豪華な家に住んでみたいということではありません。いろいろな建築を見るのが好きなのです。

 通りを歩いていると、見とれてしまうような素敵な建築を見つけます。光の反射のしかたで、建物のかたちやディテールが見えたりします。いつもと違う道を歩いたとき、いままで見たこともなかった建物に出合い、びっくりすることもあります。
「誰が住んでいるのだろう?」「どんなお仕事かしら?」「家の中はどんなだろうか?」と考える時間が大好きです。建築を見ながらぶらぶらすることは、私にとって、お金のかからない、財布もいらないぜいたくな散歩なのです。

 人生の速度を緩めてまわりを見渡してみると、小さくてシンプルかもしれないけれど、たくさんのおもしろいものが見つかるはずです。

 

 〈情報ソース〉

http://diamond.jp/articles/-/102389?display=b