「世界一幸福」なデンマークはイギリス人にも不思議の国

<ロンドンで『マリ・クレール』編集者として華々しい生活を送っていた女性が、夫とデンマークに移住して奮闘、「ヒュッゲ」な生活を模索するなかで得たもの>

「世界一幸福な国」リストでつねに上位にランクインしているデンマーク。その幸せ感を表現した「ヒュッゲ(Hygge)」という言葉が、イギリスやヨーロッパでブームとなっている。気温マイナス20度にもなる長く暗い冬を、家の中で快適に過ごすための生活の知恵を指して使う言葉だ。

ヒュッゲをキーワードにした本は何冊か出版されているが、イギリス人女性ヘレン・ラッセルによる『幸せってなんだっけ?――世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年』(鳴海深雪訳、CCCメディアハウス)は、外国人からみたデンマークのヒュッゲ観を自らの体験をもとに綴ったもの。

ロンドンで雑誌『マリ・クレール』の編集者として華々しい生活を送っていた著者は、理想のライフスタイルを紹介する記事を書きながら、自分はいつもストレスを抱えており、毎晩アルコールなしでは眠れず、メールの受信ボックスから片時も逃れることができずにいた。子宝にもなかなか恵まれず、30代半ばという年齢がプレッシャーに拍車をかける。

そんなヘレンにある日、夫が思いがけない提案を持ちかけた。それは夫の憧れの会社、レゴ社への転職の話だ。

レゴ社といえば、お馴染みのブロック玩具を製造・販売するデンマークを代表する企業であり、最近日本でも名古屋にレゴランドがオープンしたのは記憶に新しい。ヘレンの夫(本書の中で彼は終始"レゴマン"と呼ばれる)はその純粋なレゴ愛を訴えるとともに、デンマークがいかに素晴らしい国であるかを伝え、妻の説得に成功する。

極東に住む私たち日本人からすれば、イギリス人がデンマークに移住するのはさほど困難ではないのでは?と思ってしまうが、それはとんでもない勘違いだ。

人口570万人のデンマークのなかでもユトランド半島の片田舎(レゴ社の本社があるビルンという町)に外国人が暮らすというのは、ヘレンのような都会育ちでポジティブ思考の持ち主にとっても簡単ではなさそうだ。それが冬であればなおさらである。

あまりの寒さで外に出ることがままならない北欧では、家のなかで快適に過ごすことが何より優先される。部屋にキャンドルをいくつも並べて家族や友人たちと食卓を囲んだり、お気に入りのデザイナーズ家具を揃えて室内を心地よく整えることは、インテリア雑誌のなかの夢の世界ではなく、多くのデンマーク人が実践していることだ。

それは単に、おしゃれに生活するというレベルを超えている。年間のキャンドルの消費量は、なんと1人あたり6キロ。冬場の圧倒的な日照不足に対抗するため、キャンドルはビタミンDやエクササイズ、日焼けサロンと並んで、冬の鬱から逃れるための必需品なのだ。
不妊治療に挑んでいたのに、ヒュッゲであっさり妊娠!?

世界有数の福祉国家デンマークは、税率が高いことでも有名だ。でもこれにはちゃんとした理由があり、実際デンマーク人は子供の教育や失業手当などの恩恵を十分に感じているから、誰も不平を言わないのだという。

イギリスで何年も不妊治療に挑んでいたというのに、ヘレンはデンマーク移住後、ヒュッゲな生活を送るとあっさり子供を授かってしまう。そして、この国の「教育は全人類の権利」という考え方に支えられた税金の使われ方にも強く共感していく。

確かに子供を持つ人にとって、デンマークの子育て環境は理想的だ。生後6カ月以降からほとんどの子供が保育所に通い始め、母親は職場復帰が奨励される。子供たちは保育園(国が75%の費用をカバー)で社会性を身につけ、小学校に上がれば、あとは18歳まで無料で教育が受けられる。

学校では創造性と自己表現が重んじられるため、社会に出たときにも自分の主張を臆せずに言えるようになるという。天然資源に乏しく、大きな産業もないデンマークにとって、人材こそ何よりの財産とする国の方針により、すべての子供は生まれたときから手厚く保護されているというわけだ。

離婚率が高いなどの問題もあるようだが、塾や習い事などの教育費が家計を逼迫している日本と比べて、子育て事情では見習うべき点が多い。社会人になるまでの長いスパンで教育を捉えている点も見逃せない。幼児期から社会性を身につけ、自主性を育てるということは優秀な社会人の人材育成にほかならないからだ。

もちろん共感する面ばかりが書かれているわけではない。著者がカルチャーショックを感じたことはたくさんあったようで、週の平均労働時間が34時間しかないこと、セックスに寛容すぎること、クリスマスの恐るべき乱痴気騒ぎ、デンマーク以外の国旗掲揚の禁止など、暮らしてみなくては分からない現実的なデンマークの姿が描かれる。これらは読者にとっても驚きだろう。

それにしても、たった1年でここまでデンマーク・ライフをレポートした著者の取材力には脱帽だ。インタビューは彼女の生業とはいえ、ささいな日々の疑問にぶつかるたびに、持ち前の好奇心の強さとフットワークの軽さから専門家に突撃インタビューを試み、自分の体験をもとに真相に迫ろうとする。ときには客観的データを交え、ときには皮肉とユーモアをたっぷり込めて。
人と人が信頼し合えるデンマークで見つける幸せ

ヘレンが出会ったデンマーク人に必ず尋ねるのは「あなたの幸せスコアは10点中、何点ですか?」というものだ。驚いたことに、職種を問わず、ほとんどのデンマーク人が8点または9点と答えている。

研究によれば、幸せの度合いというのは、ある一定の収入を越えると必ずしも富に比例しないという。物をたくさん買えてもそれで幸せになれるわけではなく、物欲には限りがない。働けど働けどいつも満たされない思いを抱えていたロンドン時代のヘレンに自分を重ねる読者は多いだろう。

一方、ワーク・ライフ・バランスを重んじるデンマークでは、収入の多い人は50%以上もの税金を納めている。潤沢な共有財産があるから、皆が安心して生活することができるという仕組みだ。

物価は総じて高いので、無駄な買い物もしなくなる。また職場と家庭以外に、趣味のサークルをいくつも持っている人がほとんどで、そこでは収入の差を超え、共通の趣味を通じて自分の存在を実感することができる。ボランティアももちろん盛んだ。結果としてデンマークでは、人と人が互いに信頼し合える社会が成り立っている。

赤ん坊を寝かせたベビーカーを店の外に放置したまま、両親が店内で食事をとっている光景にはじめは腰を抜かしたイギリス人夫婦も、本書の最後では、生まれてきたわが子をベビーカーに眠らせたまま、店の外に置いて食事をとっている(!)。治安の良さという意味でも、このような国は稀有といわざるを得ない。

孤軍奮闘しながら異国の地で暮らすヘレンは、コメディ映画さながらに失敗を繰り返しながら、自分らしいヒュッゲな生活を模索する。レゴマンの仕事の契約更新は1年。さて、ヘレンはこの地に残るのか、それとも故郷へ帰るのか、彼女の決断に最後まで目が離せない。

 

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『幸せってなんだっけ?――世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年』
 ヘレン・ラッセル 著
 鳴海深雪 訳
 CCCメディアハウス

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 

〈情報ソース〉

http://news.line.me/image_link/oa-newsweekjapan/666870bc4b29

 

北海道立旭川美術館で「デンマーク・デザインの魅力 織田コレクションと旭川」開催中

【北海道立旭川美術館で「デンマーク・デザインの魅力 織田コレクションと旭川」開催中です!】

 

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4月21日よりスタートした、織田コレクションのデンマーク企画展。

旭川近郊に在住する椅子の研究家・織田憲嗣氏が、長年にわたり収集してきた世界の名作椅子と日用品の一大コレクションは、椅子だけで1300脚を越えます。

現在旭川美術館ではそのうち、デンマークの作品350種が展示されており、家具産地旭川のものづくりをピックアップした展示では、カンディハウスの「ルントオム チェアー」も紹介されています。

こんなに素晴らしいデザインが、ここ旭川にあるなんて・・・
とても見応えのある展示会でした。
会期は6月25日まで。ぜひご来場ください。

▽北海道立旭川美術館HPはこちら
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/abj/top.htm

 

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※関係者として特別に撮影しております。基本撮影不可ですのでご了承ください。

 

〈情報ソース〉

https://www.facebook.com/condehouse/posts/1517555934921864

マリメッコ、日本の職人技とコラボしたアイテムが伊勢丹に

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  「マリメッコMarimekko)」が、「We Love Japan」をテーマにしたポップアップショップを伊勢丹新宿店にオープンする。400年の歴史を持つ有田焼窯元をはじめ、手作りのブリキ缶職人や手ぬぐい職人、漆器店など日本の職人とコラボレーションしたアイテムを販売し、期間は6月7日から13日までの1週間。

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 マリメッコは、佐賀県伊万里市の「畑萬陶苑」、佐賀県有田町の「福泉窯」、愛知県知多郡の「KARIMOKU NEW STANDARD」、東京都台東区の「加藤製作所」、石川県加賀市の「畑漆器店」、東京都渋谷区の「かまわぬ」とコラボレーションを実施。マリメッコの人気プリント「ウニッコ」を用いたソファをはじめ、手ぬぐい(2,000円)やクッションカバー(5,000円)、マグカップ(2,500円)、バッグ(4,500円〜)、エプロン(7,000円)などを取り扱う。

photo: Kazuhiro Shiraishi

 

〈情報ソース〉

http://www.fashionsnap.com/news/2017-04-17/marimekko-isetan/

イケア×ティオ・グルッペン、限定コレクション登場

イケア×ティオ・グルッペン、限定コレクション登場
04.11 18:30
Fashionsnap.com

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 「イケア(IKEA)」が、スウェーデンのデザインブランド「ティオ・グルッペン(10-gruppen)」とコラボレーションした限定コレクション「AVSIKTLIG / アーヴシクトリグ」を4月13日に全国のイケアストアで発売する。

 

 イケアの若手デザイナー3人とティオ・グルッペンがタッグを組んだコラボレーションコレクションは、14種類の力強い模様をあしらったベッドリネンやプレート、トレイ、ラグ、布地など約50種類のアイテムをラインナップ。陽気で大胆なテキスタイルパターンが特長のティオ・グルッペンの長い歴史を反映しながら、高い現代性を備えた遊び心溢れるコレクションに仕上げたという。カラーリングはエメラルドグリーン、ウルトラマリンブルー、レモンイエローの3色のグループに白と黒を組み合わせ、異なる模様のコーディネートも簡単に楽しめるようにした。

画像: イケア・ジャパン

 

〈情報ソース〉

http://www.fashionsnap.com/news/2017-04-11/ikea-10gruppen/?utm_source=linenews&utm_medium=text&utm_campaign=news

 

 

「minä perhonen」皆川明さんも参加ー北欧的な世界も持ち込みたかったー 2017年6月「北アルプス国際芸術祭」スタート

[ようこそ、信州へ #007]北川フラムさん (北アルプス国際芸術祭 総合ディレクター)

 

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北アルプス国際芸術祭 総合ディレクター 北川フラムさん

アート本来の祝祭性、赤ちゃんのような不思議さが
地域に預けることで一気に輝き出す
それが美術館の展示にはない芸術祭の力

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ
「瀬戸内国際芸術祭」の総合ディレクターを務める
北川フラムさんと言えば世界的なアートディレクター。
今や前者は50万人、後者は100万人超えのビッグイベントに育っている。
これらは全国的なアートフェスブームの走りになった。
しかし、これを経済的な視点だけで捉えていてはいけない。
自然の風景のなかに現代美術が並ぶ光景は不似合いかもしれない。
でも過疎地域に暮らす人々が、
作品の数々を自分たちの宝物と捉えていく物語を通して、
それらは魅力的に輝き出す。
この6月から「北アルプス国際芸術祭」がスタートする。
大町市はどう変わっていくのか。

 

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水、木、土、空をテーマにかかげた芸術祭

ただし軽々しい自然ではないのが大町の魅力

 


大町市でアートフェスが行われることにワクワクします。2015年に「信濃大町 食とアートの廻廊」という前段がありました。

北川 はい、大町で町のガイドをする方々など地域にかかわるいくつかのグループの皆さんに呼ばれて、何回かお話をしに行ったわけです。それがきっかけで、彼らが「信濃大町 食とアートの廻廊」というイベントを開催しました。そして僕は市役所と縁ができ、牛越徹大町市長とお会いして、「芸術祭とはどんなものなのか」「大町ではどんなことができるのか」と聞かれお話をしたんです。ところがあろうことか市長が「やろう!」とおっしゃった。最初はやめた方がいいですよと言いました。大町で芸術祭をやることは、清水の舞台から飛び降りると言いますが、僕にとってはその10倍の高さから飛び降りるような気持ちでした。そのくらい大変なんです。そしてやはり大反対に遭いました。今はようやくスタート台に立って、面白いことができそうだと言えるところまで来ました。

◉妻有、瀬戸内のスタートもそんな感じだったんですか?

北川 妻有は大変でしたね。1市4町1村(十日町市津南町、川西町、松代町松之山町、中里村)の議員さん100名が全員反対で、実現するまでに4年かかりました。妻有をやった20年前は初めてのことでしたし、死に物狂いでできましたが、この年齢になってまた同じ目に遭うのかと思うと憂鬱でした。いや本当に。希望を持ってくれている方々もたくさんいらしたけれど、地元にしてみればとんでもない黒船がやって来たという感じだったのかもしれません。

◉それでもフラムさんは大町市に可能性を見出されたわけですよね?

北川 そうです。僕は世界中どこでも、時間はかかるし、いろんなことが起こるけれど、このやり方でできると思っているんです。そのうえで大町市は極めてユニークな特色を持っている。まず日本のほぼ真ん中にある。でもそれは日本列島を縦に割る糸魚川-静岡構造線という断層帯の上にあって地形も面白いし、植生も東と西が混じりあっている。また江戸時代から塩の道の物資集散地として、交易・交流が盛んに行われてきた重要な場所。しかも丘陵地なんですね。いろんな場所に立つと、土地がなだらかに下り、川につながり、湖が3つある。それで僕は「廻廊」という名前を使いたかった。自然が押し迫ってくるようであり、山の神や山の動物が日常とつながっているような端境、私たちの列島の原型の姿を把握できるといってもいい場所なんです。そして圧倒的なのは水ですね。あふれるばかりの水、木々に魅力があり、土と深いかかわりがあり、山に囲まれた高い空は信州を象徴するような気がして。これをちゃんと見ようと。水、木、土、空をテーマにかかげて芸術祭をやろうと。でも安易に空とか水とか言ってはいけない。そこにある重さ、あるいは透明度などが感じられる、ただの自然ではないことが大町の魅力です。そういう資源がたくさんある面白い場所にやってきた世界のアーティストたちが何を考えるか、どういう特色をつかむか楽しみだったんです。

大町市在住の折り紙作家、布施知子さんが本当にすごい

 

◉アーティストの選定はどのようにされたわけですか? 昨年の6月にはアーティストを対象にした現地見学会も行われました。

北川 実は公募では多くのアーティストが選べませんでした。それでこれまでのネットワークから若くて元気がいい人たち、海外でも評価の高い人たちを選びました。作品数は40点くらいになります。それを市街地エリア(信濃大町駅から北側東西。豪族仁科氏が京の町を模して造った碁盤の目状の町並み/塩の道街道の宿場町の名残/黒部ダム建設時に繁栄した飲屋街)、ダムエリア(大町市西側、北アルプス山麓高瀬川渓谷流域にそびえる「大町ダム」周辺)、源流エリア(大町市西側、北アルプス山麓の鹿島川流域「大町温泉郷」周辺から国営アルプスあづみの公園、大町・松川地区)、仁科三湖エリア(青木湖、中綱湖、木崎湖の総称で、今回の芸術祭では南端の木崎湖湖畔を指す)、東山エリア(大町市東側、旧八坂村/旧美麻村にあたり、大町市全体を見渡せる標高が高いエリア)に展示します。

 


◉大町だからこそ、「これはいいよ!」という作品は?

北川 まず僕が世界一の折り紙作家だと思っている大町在住の布施知子さんですね。今回一気にバンと出そうと思っているんですけど、本当にすごい。そして青島左門の生花をLEDで光らせて、その向こうにある高い空、星座を見ようという作品。僕は雨や霧で空が見えずに失敗するんじゃないかと思うんだけど、うまくいったらものすごく面白いと思う。5軒のうち2軒で人が暮らしている集落で作品を作るのがフェリーチェ・ヴァリーニ。アジア圏で一番売れている台湾の絵本作家ジミー・リャオ。箱の中の文庫本が入れてあって自由に、期限もなく、無料で借りられる「街中図書館」に触発されて図書館を作ります。そして日本の若手のエース・栗林隆は町屋に4.5メートルのダム、黒四を土で作るんです。端からあがると足湯になっている。川俣正さんは日本の現代美術のエースです。「minä perhonen」のファッションデザイナー、皆川明さんもいろいろ作ってくれる。北欧的なおしゃれな世界を持ち込みたかったんです。1日ではちょっと見られない、2日かかると思っていらしてください。

 

◉食はどんな感じで提供されるのでしょうか?
北川 東京のHATAKE AOYAMAで活躍する神保佳永さん、地元出身の料理研究家・横山タカ子さんが手を挙げてくださった13のお店一軒一軒に入りながら地元の食材を使ったメニュー開発に格闘してくださっています。相当レベルが高くなると思います。食はその地域に住んだ人たちが長らく育んできた、まさに地元そのものなんです。食が良ければお客さんはリピーターになってくれる。大町の魅力を伝えたいし、感じていただきたいと思っています。

 

アーティストたちが集落にどれだけ入り込めるか

そして地元の人たちがどれだけ熱心にかかわってくれるかが大事

北アルプス国際芸術祭が定期的に継続されることがファンとしてはうれしいです。そのための初回の成功の基準はなんですか?
北川 市長さんはお客さんが2万人来てくれればとおっしゃってましたね。

◉割と謙虚な数字な気がします(笑)。フラムさんのブランドもありますし、それは大丈夫かと。

北川 そう言っていただけるのはありがたいことですけど甘くはありません。立ち上げに時間がかかったためにまだまだ情報があまり出ていませんよね。例えば東京なんかだと、23区以外の町で芸術祭をやっても「大したことない」と思われてしまう傾向がある。それと同じ感じになるとまずい。新潟県もそうです。新潟市の人たちは十日町が何かやっても大したことないと高をくくっていた。でも2、3回目と続くなかでその見方は変わってきました。作家からするとイケると思うし、お客さんが作品を面白がってくれれば一挙に広がる。だから全国のみなさんが情報を受け取って、大町に来てくださるのには2カ月くらいの開催期間は必要なんです。

◉ではフラムさんがお考えになる、第1回目から第2回目を実現させるために重要と考えることはなんですか?

北川 もっとも重要と考えるのは集落が5〜10くらい真剣にかかわってくれたら力になると思います。もう地域に入って作り始めているアーティストもいるけれど、面白がってくれる集落も出てきましたし、さらに増えてくれば地域の考え方はだいぶ変わってきます。その集落にアーティストたちがどれだけ入り込めるか。そしてサポーターとして地元の人たちがどれだけ熱心にかかわってくれるかも大事です。これがわからない。妻有はほとんどのサポーターが東京からやってきたんですよ。新潟からは来なかった。長野市松本市大町市の関係はどうなるでしょうか。僕の存じ上げている方々を見ていると、長野県は真面目で固い人が多いかもしれない。だから最初は二の足を踏まれるかもしれない。でも壁はあってもいいんです。僕は悪戦苦闘するのを予見して、いいアーティストをがんがん入れていますから。それに、将来は、周辺の町にも受け入れてもらって広域でできたらいいという思いも込めて“北アルプス”を名前にかぶしているので。

 

おじいちゃん、おばあちゃんの姿は将来の自分の姿

元気な姿を見れば、それが若者の希望になる

 

◉妻有、瀬戸内では一般の方と現代美術の化学反応はいかがでしたか?

北川 都市に暮らす人たちにとって、都市は住みにくくなっているのは確かです。そう感じる人たちは自分がかかわれる、ファンになれる場所を求めています。これはものすごく大きい。瀬戸内の小豆島は芸術祭を行ったことで人口が1割増えました。150人しか住んでいなかった男木島は40人増えて学校が再開しました。地域のことを詳しく知れば、かかわりを持てるし、仕事だって見つかるかもしれない。そういうことが実際に起きています。そうなると地域の皆さんは自分の暮らす町に誇りを持つようになります。面白いのはおじいちゃん、おばあちゃんたちがアーティストやサポーターがやってくると、だんだんうれしくなるんでしょう、本当に元気になる。逆に外から来る人たちにとっては、おじいちゃん、おばあちゃんはやがてくる自分の将来の姿なわけです。日本は年々状況は悪くなっている。でも元気なおじいちゃん、おばあちゃんがいるところは希望になる。若い人たちなど両親の言うことは聞かなくても、よそのおじいちゃん、おばあちゃんの言うことはよく聞く。おじいちゃん、おばあちゃんもうれしいけど、若い人もうれしいんです。郷に入れば郷に従うということを初めて体験できるからでしょう。

◉確かに、芸術祭にボランティア参加している地域の皆さんの明るさは印象的でした。

北川 そうでしょ。美術はあまり役に立たないし、手間もお金もかかる。赤ちゃんみたいなものです。けれどみんなでケアしていくことで周りの人たち同士がつながるんです。お母さんが赤ちゃんをどんなにかわいがっていても、「こら!」となるときもあるでしょ。それを隣のおじいちゃん、おばちゃんが「わしらが見ているから休んでおいで」と言ってくれる。アートにはそういうものを引き起こす力がある。それでいろんなところが芸術祭をやり始めたんです。新潟では若い社長たちが率いるITの上場企業が応援に入り出した。ガイドをする人、受付をする人、そこにかかわるいろんな人たちの人間関係が大きな財産になる。芸術祭はそのきっかけ。オーストラリアハウスができたら、中国ハウスができた。そしたら今度は香港が出展するという。そういう不思議なことが起きるんです。美術館の中で展示をすることも大事だけれど、アート本来の祝祭性、赤ちゃんのような不思議さなどが地域に預けることで一気に輝き出す。もちろん大町が変わるのにも10年、あるいは3、4回はやらないと本当の成果はでないでしょう。妻有でも最初は勝手にやっていると無関心だったけれど、3回目は自慢するようになってくれましたから。そこまで持ちこたえられるかが勝負です。

 

北川 フラム Furamu Kitagawa
アートディレクター。1946年新潟県高田市(現上越市)生まれ。東京芸術大学卒業。
現在のガウディブームの下地を作った「アントニオ・ガウディ展」(1978〜79)
日本全国80校で開催された「子どものための版画展」(1980〜82)
全国194カ所38万人を動員し、アパルトヘイトに反対する動きを草の根的に展開した
アパルトヘイト否!国際美術展」(1988-〜90)などを手がける。
地域づくりの実践として、「ファーレ立川アート計画」
2000年にスタートした「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」、「水都大阪」(2009)
「にいがた水と土の芸術祭2009」「瀬戸内国際芸術祭2010、2013、2016」などがある。
長年の文化活動に対し、2003年フランス共和国政府より芸術文化勲章シュヴァリエを受勲。
2006年度芸術選奨文部科学大臣賞(芸術振興部門)、2007年度国際交流奨励賞・文化芸術交流賞
2010年香川県文化功労賞、2012年オーストラリア名誉勲章・オフィサー受賞。2016年紫綬褒章受章。

 

〈情報ソース〉

http://naganoart-plus.net/?p=6834

 

 

 

 

 

デンマーク首相もサポート。たった5年間で、国内の食料廃棄を25%も減少させた“怒れる一般人女性”

デンマーク首相もサポート。たった5年間で、国内の食料廃棄を25%も減少させた“怒れる一般人女性”


BY BE INSPIRED!編集部 · 2017年3月17日


2050年。今から33年後には、世界人口は70億人から92億人まで増加すると言われている。(参照元農林水産省)人口の増加に伴って、必然的に必要となってくるのが食料。33年間で現在より70%も増加させないと世界中の人のお腹を満たすことはできない。(参照元:Food and Agriculture Organization of the United Nations)しかし、世界中にはすでに飢饉で命を落としている人々が存在する。現段階では食料は足りているにも関わらずだ。

実は、現在の世界人口の9人に1人が飢えに苦しんでいる。(参照元WTP)なぜなら私たちは毎年「30億人分もの食料」を捨ててしまっているから。全人類の生死に関わる「フードウェイスト(食品廃棄)」という深刻な問題が世界中で起こっている現状に心を痛め、たった1人で立ち上がり国を変えた女性が北欧デンマークに存在する。

食べ物を平気で捨てていたデンマーク

 

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 デンマークを変えた女性とは、セリーナ・ユール。フードウェイストに挑戦する、デンマーク最大のNGO団体、Stop Wasting Food movement Denmarkの設立者だ。北欧デンマークといえば、食料廃棄問題に力を入れているというイメージを持っている人も多いと思うが、それは彼女の努力があってこそ。同団体が設立され、食料廃棄に対するムーブメントが始まってから5年の間に、国家全体でなんと25%も食料廃棄が減ったそうだ。

 彼女は13歳の時に、ロシアのモスクワからデンマークに越してきた。当時ロシアは共産主義の崩壊により国の経済状態が非常に不安定で、セリーナはいつ食事にありつけるか分からない毎日を過ごしていた。そんなロシアからデンマークに移り住み何よりも驚いたのは町中に溢れる食べ物の量だったという。「食料不足が当たり前」だった彼女にとって、常に食事があるという事実は夢のようだった。しかし、その中でさらに衝撃を受けたのが、食べ物を簡単に捨てるデンマーク人の存在。飢えを体験した彼女には1ミリも理解ができなかったそうだ。

“食べ物を捨てるという行為には、リスペクトがないと思います。自然に、社会に、食べ物を作った人に、動物に…そしてあなたの時間やお金にも。その食べ物を買ったあなたの時間もお金も、捨てることであなたは全部無駄にしているのですから” 

(引用元:BBC Business News)

 そんな想いをデンマークに移り住んで以来持ち続けていた彼女は、2008年に遂にNGOを立ち上げた。

とにかく動く。


 彼女がまず狙ったのがスーパー。デンマーク中に283店舗以上ある大型チェーンのスーパーRema 1000に直接交渉を行ったそうだ。スーパーでよく見かける「3個セットで割引」などの、消費者に必要以上の購入を煽る割引をやめて代わりに個別商品の割引を勧めた。同スーパーで毎日80本から100本近く売れ残りを捨てていたというバナナを「独り身だから連れてって!」という札をつけ、一房で売り出したところ、90%も廃棄が減ったそうだ。(参照元BBC Business News )

 他にも食料廃棄を減らすためのキャンペーンの企画・運営やメディア、プレスへの呼びかけ、そして議論やディベートの場を設けている。

 

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 2010年以降これまでセリーナが執筆し、国内・国外問わず発信した記事はなんと150本以上。(セリーナの記事を読みたい方はこちらから)とにかく「食料廃棄を止めよう!」という彼女の姿勢に、政治家も有名人も心を動かされ、彼女の仲間は増えていく一方だ。

 彼女が立ち上げたStop Wasting Food movement Denmarkは2010年のヨーロッパの議会と国際連合に提出された「2025年までに少なくとも50%の食料廃棄を削減せよ」という意図の国際的提案書類『Joint Declaration Against Food Waste』に関わった団体のひとつでもあり、政治的影響力も見せつけた。

 さらに、食べ残しを使ったレシピ本もセリーナの活動に共感したセレブリティシェフの力を得て出版。205ヶ国以上から参加者が集まる権威あるGourmand World Cookbook Awardsで2011年にベスト・サステイナブル・フード・ブック賞を受賞した。

フードウェイストはあなたの問題。

 フードウェイストというとコンビニから出るゴミやスーパーから出るゴミなど、「システムが悪いから私にはどうしようもない」と思ってしまっている人もいるかもしれない。しかし、実際は個人の責任が大きな部分を占める。事実、日本では国全体の食料廃棄の約半数は家庭から出ている。(参照元:政府公報オンライン)

 セリーナの偉業のひとつはデンマークの国民の意識変革を成し遂げたことだといえるだろう。以下はStop Wasting Food movement Denmarkが掲げるフードウェイストの定義である。

 

フードウェイストとは

フードウェイストとは、まだ食べられる食べ物を捨てることです。

フードウェイストとは、必要以上の食べ物を買うことです。

フードウェイストとは、見た目がちょっと悪いからといって食べれる果物を選ばないことです。

フードウェイストとは、テーブルの上に長時間置いてあったからといって食べ物を捨てることです。

フードウェイストとは、古い食べ物を冷蔵庫の奥に追いやり、新しいものを手前に置くことです。

フードウェイストとは、すでに冷凍保存しているものを使わずに次々と新しい食べ物を冷蔵保存することです。

フードウェイストとは、パッケージを捨てるついでに一緒に少し余った食べ物も捨てることです。

フードウェイストとは、レタスやキャベツやたまねぎの一番外側の部分を捨てることです。

フードウェイストとはレシピに載っている必要な分だけ食材から使って、あとは捨てることです。

フードウェイストとは、だしをとるためだけに肉や野菜を調理し、あとは捨てることです。


 フードウェイストを消費者ならではの視点で「自分ごと」にし、国民の意識を変えたのが彼女であり、それさえ成功さえすればあとは国民同士が高め合い、国全体は向上していく一方なのだ。

「たった一人の消費者」が社会を変える。

 2012年のTEDx Talksでセリーナは、「たった一人の人間」が国を変えられるということを教えてくれた。

“私はただの消費者ですが、「怒れる」消費者です。…今では首相も含め何千人にもの人が私たちをサポートしてくれています。これまでたくさんの食事をホームレスの人に届けました。EUのアジェンダに食料廃棄解決を掲げられるのに私たち団体が影響を与えました。国際連合の食料廃棄に関する記事でも私たちの活動が言及されました。でも、私たちはただの一般人です。ただの消費者です。誰にやらされているわけでもありません。この問題に愛を持っているから行動しているだけなのです。デンマークの最大級のスーパーRema 1000の全店舗で個別の商品に割引をつけてもらえるようになった…これが消費者の力です。これが普通の人ができることです。みなさん、これはあなたにもできることなのです”

(引用元:TEDx Talks)

 大きな問題を目の前にすると、「自分一人に何ができるか」と誰もが疑問を一度はもってしまうだろう。しかし、とにかくアクションを起こし、声をあげることで、共感をしてくれる人たちが力になってくれる。一人で始めたこともいつのまにか、国までをも動かすほどの影響力を持ち、社会を変えることが可能だとセリーナは教えてくれたのではないだろうか。

 

All photos by Stop Wasting Food Denmark
Text by Noemi Minami
ーBe inspired!

 

〈情報ソース〉

http://beinspiredglobal.com/stop-wasting-food-movement-denmark+

 

 

ART/DESIGN 皆川明 100日 WORKSHOP

ミナ ペルホネン(minä perhonen)のデザイナー皆川明さんが2016年ワタリウム美術館で開催した100日間のワークショップ「皆川明 100日の空想旅行」が一冊の本『皆川明 100日 WORKSHOP』(スペースシャワーブックス刊)になりました。

 

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ルーティンワークに追われる日々。忙しさに追われ気がつけばマニュアル化してしまった考え方。この新刊『皆川明 100日 WORKSHOP』には毎日を過ごすなかでいつの間にか捕われてしまう思考のループから、一歩踏み出すためのヒントが皆川さん自身の言葉で発信されています。そして100日間のワークショップに参加した方たちが体験した空想の「旅」の記録、スマイルズの遠山氏、教育学者の秋田喜代美氏との対談も収録しました。時間にしばられず、読んで、見て、思いを巡らせることの楽しみがいっぱいに詰まった一冊です。

 

〈情報ソース〉

http://www.watarium.co.jp/onsundays/html/products/detail.php?product_id=1309